INDEXback宮廷舞踏会 -芙蓉- 第02章 第00話next
1.2.

1. 「イーストフィールド」


 東方王宮。
 そこは、イーストフィールドを治める東方王(フィールドマスター)マクラレーン様の御座所であり、東部の政治、金融、物流、観光など、ありとあらゆるものの中心地です。

 イーストフィールドは五十以上の領地から成り、それぞれを一人の領主様が治めていらっしゃいます。領主の役目は領地内の治安維持及び税金の徴収等。地域性や慣習などを鑑み、領内のみに有効な法律――領律の制定も、領主様及び区領議員のお役目となっています。
 地位は低く扱われますが、国の生産者である領民――あるいは国民とも呼べますが――に密着した地位なので、領民から多くの献上品を直接受け取る事が多く、平たく言うとお金持ちです。献上品も簡単に言えば賄賂ですが、そんなに小汚いものではありません。良い領主様に、良く出来た野菜を食べて欲しいと献上するのは何も悪い事ではありませんから、良い賄賂だと言えます。
 ただし、この賄賂を、領主と云う地位を利用して強要すると、それは法律に違反した立派な犯罪です。このイーストフィールドでは余り聞く事はありませんが、地位を利用して贅沢三昧の領主様も確かにいらっしゃいます。実際、その様な方がいらっしゃったと先日聞いたばかり。情けないお話ですが、事実なので仕方ありません。
 しかし、圧倒的に良い領主様方ばかりなのもまた事実です。イーストフィールドが今日も平和なのも、その領主様方の支えがあってからこそ。毎日、本当にご苦労様です。

 その領主様を統括する役目にあるのが知事の方々です。
 地方王宮を中心に東西南北に一人ずつ。合計四人。それぞれ大よそ十の領地を束ね、それぞれを管理するお役目なのですが、東方王宮にはこの知事職が在りません。それと言うのも、先代の東方王様がこの知事職を「無用だ」と言って失くしてしまわれたそうなんです。
 まあ、気持ち分かりますけどね。
 知事職は領主を束ねる役目と銘打ってあるものの、実際の仕事はそんなにはありません。何故なら、領ごとの自治がしっかりしているから。領主様がしっかりとお仕事をこなして下さるので、その分、知事の仕事はまったくと言って良い程無かったそうです。
 その為、知事職は調印議員方やフィールドマスターの御親戚筋の天下り職として使われていたとか。
 当然、領民はそれに反発していたのですが、先代東方王の決断で、東方王宮の株は一気に鰻登りしました。そして、現在のイーストフィールドの基盤を作る迄に至ったんです。
 現在のマスター・マクラレーン様も素晴しいお方ですが、先代も負けず劣らず凄い方だったみたいですね。

 知事職を失くして良かった事は、まず人件費が削減された事。それから、領主からマスターへ直接地方のお話をする事が出来るので、王宮から地方への対応が素早くなった事などです。
 困った事は、フィールドマスターのお仕事が増えてしまった事。
 しかし、我らがマスターはそれにもめげず今日も頑張っておられます。

 イーストフィールドを治めるフィールドマスター、別名、東方王様のお名前はマクラレーン様。温厚な性格と決断力に優れた人物として有名な御方です。
 中央王宮の遠い外戚でいらっしゃるそうですが発言権はあまり無いため、中央からは一歩離れた政治をなさっておいでです。御本人も権力欲の無い御方ですから、よくあるお家騒動と云ったものにはまったく縁がありません。
 奥様は二人。御正室であり東方王妃であられるレイチェル様。御側室のオーレリア様。レイチェル様には三人、オーレリア様にはお一人の子宝にも恵まれ、奥様同士の御関係も良好とは言えずとも悪くはなく、平和そのもの。
 マスターをお助けし、東方政治の中心である調印議会の議員方も優秀な人材ばかりです。
 軍部にも問題はありません。長い間、戦争が起きていないので強いかどうかは知りませんが、災害時のレスキュー隊としては役に立っているみたいです。将軍や小隊長を見る限りでは、いざとなったらやってくれそうな方々ばかりですし、問題と呼べる問題は無いでしょう。
 東方王宮内も、問題はありません。マクラレーン様に代わって王宮内の一切を取り仕切る不詳私、芙蓉の許で今日もとても平和です。

 ……明日はどうか、知りませんけどね。
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1.2.

2. 「東方王宮」


  東方王宮は広い敷地の中に二つのお城を持っています。門に近い場所にある大きな城を外城、その奥で人目に触れ辛いように建っている城を内城と呼びます。
 それぞれは与えられている役目が違います。
 外城は外交の為の建物。大小の客間、大広間や、侍女や侍従達などの王宮に仕える者の執務室等も。勿論、東方王宮総取締役である私の執務室も、そこ。
 内城は政治の為の建物。フィールドマスターや調印議員の方々の執務室があります。最も重要なのは、マスターの私室や御家族のお部屋がある事。事実上の居住区となっている事です。その為、内城への出入りは厳重に管理され、場合によっては持ち物検査も適応されます。

 しかし、総取締役ともなれば話は別。
 王宮内の一切を取り仕切る役目を担う取締役は、フィールドマスターの御信頼があってからこそ成り立つ役職の為、総取締役と云う理由だけで殆どが顔パスで済んでしまいます。勿論、内城への出入りも自由です。
 内城の更に奥には、冷たい石回廊が在ります。その辺りは人が寄り付きません。石回廊にはマスターの参謀であるウィル様が御住まいなのですが、このお方が感応能力に優れたエルフ族でいらっしゃる為、人間の感情にてられないようにとの配慮から、メイド達も極力近付かない様にしているんです。ちなみに、この石回廊も私はフリーパスです。

 だからここは、秘密の場所で。
 だからここから、また物語りは始まるのです。
1.2.
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